~はじめに
ISO14001、環境マネジメントシステムの国際規格が2026年に改訂される予定です。日本規格協会が開催した「ISO140012026改訂動向セミナー」では、TC207委員/WG15のSusan Briggs氏をはじめとする専門家から、改訂の方向性について詳細な説明がありました。本コラムでは、その主要なポイントをまとめます。
~改訂の全体像
2026年版ISO14001の改訂は、技術的な大幅変更を伴わない「Amendment(修正)形式」で進められています。
主な特徴としては:
Annex SLの変更部分の組み込み
要求事項の明確化(特に付属書、備考、ガイダンスの追補)
2026年3月に「ISO 14001:2026」として発行予定
FDISは2025年12月~2026年1月に発行予定
移行期間は当初の24ヶ月から36ヶ月への延長を検討中
~主な変更点
1. 気候変動への明示的言及
4.1項に気候変動関連事項を組織の背景として追加
汚染レベル、自然資源の利用可能性、生物多様性、生態系の健全性などの環境条件を明示的に考慮、ロンドン宣言を受け、GHG、ESG関連事項が必須になる。
2. ライフサイクル視点の強化
製品・サービスの各ライフサイクル段階における環境側面・影響の考慮に関する注記を追加
原材料の取得から最終処分までの環境側面を洗い出し、管理する視点を明確化
サプライヤーへの要件、設計管理、リサイクル・再利用等を含む
3. リスクと機会の概念の明確化
リスクの定義を削除(TMB決議33/2024による)
環境リスクの概念は「環境影響」で表現
リスクと機会の優先順位を設定する
- 優先1:環境側面
- 優先2:順守義務
- 優先3:リスクと機会(組織状況や利害関係者のニーズに関連)
4. 変更管理に関する新条項(6.3)
EMSに影響を与える変更を計画的に実施する要件を追加
変更はEMSの意図した結果を達成できるよう管理
5. 用語の変更
outcome(成果)→result(結果)
fulfill(満たす)→meet(適合)
文書化された情報をDocument and recordsとに区別
6. その他の変更点
内部監査(9.2):目的の明確化を追加
マネジメントレビュー(9.3):すべての「インプット」が必須に
「利害関係者のニーズと期待の変化」を新たなインプットとして追加
10.1(改善)と10.3(継続的改善)の統合
~日本企業への示唆
改訂版ISO14001は、日本の環境政策や企業活動にも大きな関連性があります:
環境省第6次環境基本計画との連携(ネットゼロ・環境経済・ネイチャーポジティブ等)
環境デュー・デリジェンスとの関連性強化
人的資本経営との連携によるトップマネジメントのリーダーシップ
ESG情報開示の拡充(TCFD・TNFDレポートの普及、SSBJ基準の適用)
~まとめ
ISO14001:2026の改訂は、大きな技術的変更ではなく、要求事項の明確化と現代的な環境課題(特に気候変動)への対応強化が主眼となっています。ライフサイクル視点の強化やリスク・機会の概念整理により、組織はより体系的な環境マネジメントシステムの構築が求められることになります。今後も改訂動向を注視し、組織の持続可能な発展に向けた準備を進めることが重要です。
注意:本日時点で改訂の動向であるが、あくまでも“動向”であって決定事項でないこと。今年中にあと2回(もしくは3回)のmeetingがある。よって、このコラムの内容については動向情報ですので、これで決定したことはありません。
ソコテックでは、改訂動向についての無料説明会などを開催予定です。お気軽のご相談ください。
執筆者:ヘッド・オブ・サーティフィケーション 朝井 光治