採用情報
J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
CO2等の排出・吸収量の認証を受けるプロジェクト実施者のことを創出者とよびます。創出者には、ランニングコストの低減やクリーンエネルギーの導入を図ったり、地球温暖化対策への取組での外へのPR効果、創出したクレジットの利用における新しいネットワークの構築等のメリットがあります。
クレジットの認証・発行までにはプロジェクト計画書の登録とモニタリング(プロジェクトの実施状況の確認)の2つのステップあります。
ソコテックは、J-クレジット制度における登録審査機関(5社)の1社としてプロジェクト実施者が作成したプロジェクト計画内容の妥当性審査と、モニタリング報告結果の検証を行っています。
今回は、CFPレポートおよびCFPガイドライン公表のための経済産業省の「カーボンフットプリント検討会(サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリント算定・検証等に関する検討会)」に委員として 参加した野村審査員の現地検証のタイムスケジュールをご紹介します。
訪問先は愛知県豊橋市の株式会社アブラックス様です。
アブラックス様は、工場等で使用される化石由来の鉱物油を、バイオ油を特殊ろ過の工程で高度な精製を実現した植物性工業用油「バイオ潤滑油」に代替することによりCO2排出量低減を担う環境創造事業を行うスタートアップ企業です。
工場や地域から廃棄物として排出されるバイオ油を素材原料とし、バイオ潤滑油やバイオ製品に精製、転換して、工業経営における低炭素、脱炭素社会を実現をめざしています。
現在アブラックス様は、J-クレジット制度におけるプログラム型排出削減プロジェクト「バイオ潤滑油によるCO2削減プロジェクト」を登録申請しています。
プロジェクトの登録形態には通常型とプログラム型の2種類があり、プログラム型排出削減プロジェクトでは、個々の削減活動規模が小さすぎる場合、複数の活動が見込めるのであればそれらをとりまとめてクレジット化することができます。
さらに登録後に削減活動を随時追加することもできるので、登録にかかる審査・コストを削減することが可能です。
アブラックス様は、「バイオ潤滑油」を購入・使用して削減活動を実施する全国の事業所を会員としてとりまとめ、会員情報および、削減活動内容、モニタリングデータの収集・管理等を行っており、J-クレジット申請で創出したクレジットは会員に還元します。
今回は登録済みのプロジェクトの実施状況を報告する「モニタリング報告書」「削減活動リスト」の作成支援、および検証のための訪問です。
J-クレジット制度には排出削減・吸収に資する技術ごとに適用範囲や算定方法、モニタリング方法等を規程した「方法論」という規程が用意されています。
今回の検証対象は、J-クレジットにおいても、はじめて「バイオ潤滑油の使用」の方法論が適用されるプロジェクトです。
午前
場所は住宅と工場が混在する地域でした。
今回は駅からレンタカーで向かいます。
二か月前に量産体制のためできた真っ白な工場敷地内の脇に駐車します。
同敷地内の工場の脇に事務所があります。
アブラックス様は、斎藤塗工店様がバイオ潤滑油の研究に着目して、その子会社として2022年6月設立されました。
22年12月、経済産業省、J-クレジット制度においてバイオ潤滑油が認証されました。
バイオ潤滑油は、大きな設備投資が不要ですし、既存の鉱物油と変わりなく使用できCO2排出量削減を実現しやすい製品といえます。
事務所入り口にはバイオ潤滑油、エイトオイル(製品名)のバイオマスマークの認定証が飾られていました。
今回は二度目の訪問のため、早速書類確認にはいります。
排出削減量の算定に必要な実測データ等が、プロジェクト計画書どおりにモニタリングされたものかどうかを確認します。
プロジェクト実施者は、Jークレジットで定められた様式に従い「モニタリング報告書」「削減活動実績報告リスト」を作成しなければなりません。
メールでやりとりして先に作成いただいた記載内容について1点ずつ正しく記載されているか確認していきます。
プロジェクト計画書登録申請からまもないこともあり、当初の計画書からの変更もなく、予定どおり検証はすすみました。
12時前、予定より少し早くひと段落つきましたので、お昼休憩。
午後
午後、引き続き机上確認をすすめます。
工業用潤滑油には、油膜で摩擦を緩和・防止、温度上昇を抑えたり、機械の錆を防いだりといった様々な働きがあります。
用途にあわせていくつかの種類をブレンドしてつくられています。そのため、アブラックス様の製品においてもブレンド(製品)によりバイオ由来オイルの割合が違います。
今回使用のオイルのバイオ由来率は、JORA(一般社団法人日本有機資源協会)のHPへの掲載と、認定証をエビデンスとして確認しました。
このように、根拠資料等も確認しながら各項目を確認して検証をすすめます。
机上確認がひととおり終わり、工場に移動します。
工業用オイルの売買においては単位がリットルが一般的なようですが、CO2排出量の計算単位はトンキロを使用するため、工場の計測器で計測法に基づき計測しているということで計測機器を確認しました。
今後、帳票にもJ-クレジット対応のためにトンキロ単位の記載を行うということでした。
排出量削減の取組には、対応のための手間、費用等が発生する場合が多いので、実施するのに躊躇する企業も多いようです。
もっとクレジット化のメリットの認知がすすみ、取組が社会でもっと高く評価されることを望みます。
その後、敷地内の電気メーターも確認します。
最後に、発見事項についてお客様に再度まとめたものをご説明します。
発見事項とは、今回不備があった点、修正すべき点などです。
最後に、確認のサインをいただき今回の検証は終了です。
その後、今後の手順や、ご質問もありJ-クレジット実施者推移等についてのお話しました。J-クレジット制度登録プロジェクト件数は年々増えています。
出典:J-クレジット 登録・認証状況 https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_002.pdf
取材日:2023年11月
「審査員職」希望の旨を記載の上、郵便にてご応募ください。
未経験の方でも安心してご応募ください。